Cooperative Research In Mystery & Entertainment
探偵小説研究会
「CRITICA」第5号 目次


探偵小説研究会編著「CRITICA」第5号
 (2010年 8月発行、A5版、表紙カラー、イベント頒布価格1500円)

「クリティカ」第5号表紙(小)

目次

序文(読む

第一特集 現代本格の状況
虚ろの騎士と状況の檻――ゼロ年代本格ミステリからセカイ系への応答 →試供版を読む(別サイト)小田牧央
『綺想宮殺人事件』論、あるいは新本格殺害事件千街晶之
超能力と夢解き大森滋樹
アーキテクチャ試論鷹城宏
路頭迷走市川尚吾
シンポジウム「越境する探偵小説――日本と台湾の異文化交流」第二部「柄刀一氏を囲んでの意見交換会」レポート 

第二特集 クリスティー・コネクション
『五匹の子豚』私論佳多山大地
ある奇偶――『ゼロ時間へ』小論川井賢二
なぜジョージに頼まなかったのか?法月綸太郎
水上勉とアガサ・クリスティー――バートラム・ホテルから横井司
クリスティ本総まくり――アガサ・クリスティ関連書籍レビュー川井賢二

解放区
座談会「われら中年探偵団――ミステリを論ずるということ」谷口基×市川尚吾×廣澤吉泰×横井司
ミステリからの脱線 前編――橋本治『ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかの殺人事件』について円堂都司昭
優作の青白い時期中辻理夫
加納一朗・児童もの覆刻「きょうふの人形」解題・笹川吉晴

執筆者後記


「CRITICA」第5号 序文

「CRITICA」第五号をお届けする。

 第一特集は「現代本格の状況」と題し、近年発表された作品とそれがはらむ問題圏をめぐる論考をまとめている。ゲーデル問題(後期クイーン問題)やセカイ系、環境管理型権力(あるいはアーキテクチャ)など、現代思想や現代社会学の用語・術語がミステリ評論に導入されることの是非は、書き手・読み手いずれにせよ、ミステリに関わるものにとっては、無視できない問題であろう。すべて無かったことにして、知恵の実を知る以前のエデンの園に戻ることなどできないし、それは知的にも怠惰な姿勢だといわざるを得ない。また、すべてが解決済みの検案として済ませるわけにもいかない。『容疑者X』論争などにしてもそうだが、論争において重要なのは議論の勝ち負けではなく、問題意識を持ち続けることで、新たな知見を得ようとする営みであるはずだ。本号に発表された論文が基となって、さらなる活発な議論や考察の展開に役立てば、幸いである。

 なお、関係機関と参加者のご好意により、北海道大学院文学研究科の映像・表現文化論講座と中興大学台湾文学研究所アジア大衆文化および新興メディア研究センターが共催したシンポジウムのレポートを掲載することができたのは、望外の喜びであった。近年の〈アジア本格リーグ〉の刊行や、台湾主催の島田荘司推理小説賞など、アジア文化圏におけるミステリ浸透の動向には、無視できないものがある。本号掲載の大森滋樹の論考も、そうした動向を見据えたものだといえよう。また、シンポジウムの第二部では柄刀一氏をゲストとして迎えており、柄刀氏の創作の秘密を知る上で好個の資料ともなっている。広く、現代本格の状況に関心のある向きの注目を集めることだろう。

 第二特集は、「クリスティー・コネクション」と題して、今年生誕一二〇年を迎えるアガサ・クリスティーをフィーチャーしている。クリスティーは現在もなお、ミステリ・ファンの支持を集め、多くの読者に読まれ続けている、稀有な作家の一人である。ミステリの初心者に読むべき本を薦めるなら、スパイものやハードボイルドを除けば、クリスティーの作品を十編あげてもおかしくないくらい、その作風のレンジは広い。にもかかわらず、ベストテンなどの企画では、いまだに『そして誰もいなくなった』が第一位を占め、同作品を頂点とする初期・中期の古典的名作が支持を集めるだけ、というのが現状のように思われる。そのレンジに合ったかたちで、作品世界が充分に論じられ、解釈されているとは、いいがたい。そこで、キャラクター分析やトリック分析にとどまらないクリスティー論の可能性を拓くことができていれば、という思いを込め、特集名に「コネクション」と記した次第である。

 特集外のコーナーとして、例年通り「解放区」を設けた。橋本治のミステリを論じた円堂都司昭、類稀なる俳優であり、ミステリ映画への出演も多い松田優作について論じた中辻理夫の文章の他、本年度の本格ミステリ大賞・評論部門の受賞者である谷口基氏を迎えた座談会を掲載した。受賞作『戦前戦後異端文学論』の裏話だけでなく、本格とは何か、ミステリを論ずるとはどういうことかという点にまで談が及んでおり、興味の尽きない読物になっていると自負するものである。谷口氏にはお忙しい中、快く参加していただき、貴重なお話しを聞かせていただいた。この場を借りて感謝したい。

 さらには、ミステリだけでなく、SFやアニメ、ジュヴナイル・シリーズの是馬・荒馬もので一世を風靡し、今年(公式の記録では)作家活動五〇年を迎える加納一朗氏のご好意により、氏が学年・学習誌の附録に書き下ろした、先駆的かつ貴重なホラー作品を覆刻してお目にかけることができたのは、幸いであった。大方の支持を得られることと思われる(なお、加納氏にはミス・マープルを登場させた贋作短編もあり、今号で特集したクリスティーとも、まんざら縁がない訳ではないのというのも、奇遇であった)。

 従来になくバラエティーに富んだコンテンツを揃えることとなった。ご愛読願えれば幸いである。


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