◆「CRITICA」第19号 別冊目次◆
探偵小説研究会編著「CRITICA」第19号 別冊
「島ミス350選(国内作家編)」 市川尚吾
(2024年 8月発行、A5版、表紙カラー)
はじめに
島ミスブームである。
島を舞台にしたミステリが、ここ数年、かつてないほど多く書かれている(海外作品でも増加傾向がみられるようだが、本稿では終始、国産ミステリに話を限定している点は、まず最初に了解されたい)。そのことによって各作家が「島ミス」を書く際のハードルも下がっていて(「みんな書いているので大丈夫」という自信が生まれる。あるいは自然と「島ミス」を数多く読むことになり、経験値を重ねることによって、自分が書く上でのコツのようなものを掴んだりして)、それがさらに多くの新作を生むという相乗効果も発生しているように思う。
そんなこんなで島を舞台にしたミステリのガイドブックを作成することにした。島は実在・架空の両方をリストアップした。さすがに網羅は叶わず、いろいろ抜け(存在を知らない・持ってない・持っているけど未読・読んでいるけど挙げ忘れた・確実に読んでいるけど今回は本を発掘できなかった等々)があると思うがご了承されたい。
どこまでを「島」とするかは考えどころで、佐渡島や淡路島などはまだ良いとしても、沖縄諸島やハワイ諸島の全体、あるいは四国などが舞台になっている作品は、「島」として扱うには大きすぎるとして基本的に除外している(一部例外もある)。マンハッタン島や香港島も、作中で「島」であることが強調されている場合を除けば、もはや都市であって「島」ではないということで除外。逆にサイズ不足が問題になる場合もあって、島の敷地いっぱいに館が建てられている作品(綾辻行人『暗黒館の殺人』や倉阪鬼一郎『波上館の犯罪』など)は、その本質が島ものではなく館ものにある(館の外が水面に囲まれているという状況を作り出すために、館の土台としてだけ島が存在しており、「島」感がまったくない)と判断し、リストからは除外させていただいた。小説以外の島ミス(ドラマ・映画・漫画・ゲーム等)は基本的に採っていない。ノベライズ作品(小説版)があっても、元メディアにおける島情報(視覚的なもの)が事前に存在した状態で執筆されているわけで、普通の小説と同じ土俵では扱えないと判断しそれらも基本除外した(実は本稿執筆者が他メディアの作品に疎いという理由のほうが大きい)。なので筐神島(TRICK劇場版)や鳳凰島(相棒劇場版)、歌島(金田一少年の事件簿)、六軒島(うみねこのなく頃に)、三日月島(かまいたちの夜2)等々の名は(別の小説作品に同じ名前の島が登場する場合を除き)本稿のリスト上には無い。
その上で、作成したリスト(繰り返すが、自分が担当したのは国内作家の作品に限定したもので、しかもいまだに「暫定版」ではあるが)をそのまま載せるのでは工夫がないと思ったので、今回は「観光案内」ふうに各島を紹介する形でお見せすることにした(「そのまま」を見たい人は巻末の「さくいん」に本稿で取り上げた三五〇作品の、また《CRITICA》一九号にはその元となった「暫定版(国内作家編)」全五九一作品のリストが載っているのでそちらををどうぞ)。なので各項目のインデックスは「通番 島の名前/『作品名』作家名」と島名を立てた形とし、紹介順も1.北海道&東北エリア、2.新潟以西の本州日本海側、3.関東エリア、4.中部&東京都島嶼部、5.関西&瀬戸内&四国、6.九州沖縄エリア、7.海外、8.所在地不明と、島の所在地に拠って八つに分類し、さらにR(実在する島)とF(架空の島)に区分した上で、各エリア・区分ごとに通番を振ってみた(伊豆諸島や小笠原諸島は行政上は東京都の扱いになるが、ここでは関東ではなく中部と同じエリアに分類した。架空の島が「伊豆下田の沖」とだけ書かれていた場合、行政区分が東京都なのか静岡県なのか判断が難しいが、今回の区分けならばどちらにせよ「4」に入れてしまえば良い、という利点を優先した。なお「4.中部」といっても北陸三県は「2.日本海側」に分類する。中国地方内陸部の2と5の仕分け方[湖の中の島などを扱うとき]も同様に、県単位で山陰・山陽という観点からどちらかに振り分けている)。各エリア内での順番に法則性はない。県単位や作品の発表順で並べる等はせずに、ただ手元にあった本から順に作業を行い連番を振っている(ので後からの追加も容易であることに注目されたい。今回が暫定版レベルだとの認識が、そのルールを採用した根底にはある)。
各島の紹介では[場所][大きさ][人口][アクセス][特色]の五項をわかる範囲で明記し(実在する島「R」の場合はWikipediaを参考にした)、続いてその島が登場する作品の紹介も簡単に行うという形で各項目をまとめている。ネタバレには配慮したつもりなので、お気楽に読んでいただければ幸いである。
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