◆「CRITICA」第19号 目次◆
探偵小説研究会編著「CRITICA」第19号
(2024年 8月発行、A5版、表紙カラー)
目次
特集――島ミステリを読もう!
〈特別座談会〉島ミステリを語ろう |
市川尚吾×千街晶之×嵩平何×横井司 |
島ミス全リスト(国内作家編)暫定版
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市川尚吾 |
島ミス全リスト(海外作家編)暫定版 |
市川尚吾・横井司 |
『そして誰もいなくなった』再読――読者への挑戦状および旧約の神 |
横井司 |
「孤島の来訪者マレヒトを退治する」――異人殺しの民俗学 |
波多野健 |
島ミス大全(コミック編) |
嵩平何・廣澤吉泰 |
解放区 |
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「だるまさんがかぞえた」を正攻法で勝負したらどうなるか? |
浅木原忍 |
金髪女(フェアレディ)が「意外な犯人」だった時代 |
波多野健 |
このいち読書日記(R5年下期編) |
市川尚吾 |
このいち読書日記(R6年上期編) |
市川尚吾 |
ミステリ読者のための東方Project不完全ガイド |
浅木原忍 |
原作と映像の交叉光線(クロスライト) |
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出張版21/イカロスの墜落のある風景――『ゴールド・ボーイ』 |
千街晶之 |
出張編22/悪女の生存戦略――『仕掛人・藤枝梅安』 |
千街晶之 |
出張編23/孤島幻戯――『十角館の殺人』 |
千街晶之 |
出張編24/ウィーンが踊る限り――『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』 |
千街晶之 |
『本格ミステリ・エターナル300』刊行記念鼎談 |
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2023年の傑作ミステリを振り返る |
笹川吉晴×千街晶之×蔓葉信博 |
序文
『CRITICA』19号をお届けする。
これまで『CRITICA』では、第一特集を国内作家か海外作家の特集、第二特集を現代本格の定点観測、といった構成で組まれてきたわけだが、今回は第一特集における作家縛りを解き、テーマ特集を組むことになった。
テーマを決めるにあたって、会員の間で話し合われたときに、最近は孤島や、孤島でなくとも島を舞台にしたミステリが多いねえ、ということが話題になり、島が絡むミステリの特集になったものである。
島ものは内外ともに多いという印象だったが、特集テーマによる座談会を読んでいただければ分かる通り、最近の日本ミステリは殊更に島ものが多いようである。しかも、特集が決まってから、綾辻行人の『十角館の殺人』がテレビドラマ化され、それを踏まえて『小説現代』二〇二四年四月号で綾辻行人特集が組まれたり、会員制読書クラブMRC(メフィストリーダーズクラブ)の書評連載「ミステリーガイド&ミステリースクール」では、島ミステリがテーマとなったり、といった状況。通常なら第二特集となるべき現代本格の動向を図らずも探るかたちになった。
そうしたさまざまな島ミステリへのアプローチの中でも、今回の『CRITICA』は、かなり攻めていけているといっても、必ずしも自画自賛、手前味噌の弊に陥っていることにはなるまい。市川尚吾による島ミステリ・ガイドは、実に三五〇作品にも及んだため、初の別冊を編むことになった次第である。国内の島ミスが三五〇なら、海外の島ミスもそれくらい、と思わないでもなかったが、残念ながら力及ばず。そちらは、市川尚吾が検索してヒットしたものをリストアップし、それに横井司が作品を追加し、発表年代を追補した「島ミス全リスト(海外作家編)」で代えることにした。海外における島をテーマとする小説の歴史が俯瞰できるように、いわゆる黄金時代以前の作例にはミステリとはいえないような作品も加えておいた(一部、戯曲も含まれる)。ご海容願いたく、海外の島ミステリについては、特集座談会「島ミステリを語ろう!」において、大体の傾向を概観しているので、そちらも参考にしていただければ幸いである。さらに嵩平何・廣澤吉泰による「島ミス大全(コミック編)」というガイド&リストを併録しているから、映像や舞台関係を除けば、ほぼほぼ島ミステリの全容をうかがうに足る内容になっているのではないか。
論考としては、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』をめぐる横井論文と、方丈貴恵の『孤島の来訪者』をめぐる波多野論文を掲載している。図らずも新旧内外をフォローした結果となったのは幸いであった。
会員が各々の興味に応じたテーマを論じる解放区では、今話題の青崎有吾『地雷グリコ』収中の一編「だるまさんがかぞえた」をめぐる浅木原忍の投稿や、読書日記スタイルの作品レビューを投じた市川尚吾の寄稿が、現代本格の動向を探るものとして有効かもしれない。また浅木原による力作「ミステリ読者のための東方Project不完全ガイド」は、現代ミステリのある側面を垣間見せるものとして重要だと感ずる。その他、海外本格ミステリにおける金髪女性への視線をディクスン・カーとS・S・ヴァン・ダインの作品から読み解く波多野健の論考は、本号における海外ミステリ論の少なさに対する渇を癒してくれよう。本誌での長期連載が書肆侃侃房からまとめられたばかりの千街晶之〈原作と映像の交クロスライト叉光線・出張版〉が四本もの新稿を投じてくれた。そのうちのひとつは、綾辻行人『十角館の殺人』の映像化作品なのだが、ナンバリングの関係で、島ミステリ特集の方に回せなかったのは残念である。一方、昨年まとめられた当会の編著『本格ミステリ・エターナル300』(行舟文化)の刊行を記念して行なわれた書店イベント、笹川吉晴・千街晶之・蔓葉信博による鼎談を最後に付け加えることができたのは、幸いであった。
当会の編著として、ミステリ雑誌『ジャーロ』での連載「探偵小説研究会のミステリを編みたいっ!」をまとめた『妄想アンソロジー式ミステリガイド』も、書肆侃侃房から上梓されている。そうした勢いの余勢を駆って取り組まれただけあって、今回の『CRITICA』は、いつもにも増してボリューム・アップを図ることができた。研究会の編著ともども、ご愛読を乞う次第である。
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